友と約束した
秘密の湖へ向かう
ところどころ穴があいた森を
パッチワークのように繋ぎながら
誰もが死んだように眠る世界
誰も起こさぬように
誰にも見つからないように
森は
わたしを呑み込み
わたしを溶かす
重なりあった緑を抜ける
柔らかい明かりを灯す月が
目に飛び込んでくる
丸鏡のような満月
この世界の住人を眠らせ
ゆっくり忘却させる球体
月から滴が
こぼれ落ちるように広がる
丸い湖へ向かって
歩み寄る
桟橋の先には
水から生まれ出たような
透明な友が立っている
わたしを
憐むような
眼差しで
見つめている
わたしの歩みに合わせて
淡く光る湖に吸い込まれるように
後退りをする彼女
わたしは
手を伸ばし
彼女を
掴もうとする
そうして
とても懐かしい
友の名を口にする
眠っていた世界に音が生まれ
目覚めた住人のひとりによって
月が撃ち落とされる
光が萎んでいくのと同時に
輝きに満ちていた水面は
陰りを見せる
あっという間に
光を浴びた友の白い身体が
黒い影へ変貌をとげる
ぱっくりと口を開けた
湖底の深淵へ向かって
沈んでいく友
わたしは
その姿を
網膜に焼き付ける
やがて
開かれた深淵が
音もなく閉じる
辺りを震わせていた
波紋が消え
森に生息する
鳥やコヨーテたちが
呼吸を始める
そうして
わたしは
わたしの世界が
再び目覚めるのを待つ
Story: Arata Sasaki (HP / Instagram)
Illustration: Emi Ueoka (HP / Instagram)