[short movie] ポケットマン

 幼少期に観たアニメーションの記憶として強く刻み込まれているのは、「ガンバの大冒険」「ガジェット警部」、「青いブリンク」などが挙げられます。幼少期の私は夕方、親が夕食をつくってくれる1時間だけしか観ることを許されていませんでしたので、貴重なその時間を本当に楽しみにしていた記憶があります (就寝する直前に読んでくれた絵本や児童書の時間もまた楽しみにしてはいましたが)。
 私が好きだったアニメーションの特徴は、音楽とモーションが実に巧みにデザインされているものでした。幼少の頃の私は、母親曰く、音楽に合わせてダンスを踊ったり、動作を真似ていたり、身体感覚を伴いながら鑑賞していたようです。今でもあの時流れていた音楽 (セリフむ含む) を聴くと、身体は動かさないものの、キャラクターのモーションが容易く脳内で再生されます。
 そのような記憶を思い出しながら、自分たちの子どもたちを観察すると、同じように音楽とモーションが素晴らしいアニメーション作品を好んでいるのがわかります。30年以上前の作品と現在の作品ではクオリティがかなり進歩していますので、比較することも躊躇われるのですが、最近、我が子たちは、『ポケットマン』という作品を楽しんでいます。
『ポケットマン』は、ジョージア出身監督の作品で、古いスーツケースに暮らす小人の物語。主人公の小人はある日、家である古いスーツケースを蹴飛ばされてしまい、その犯人を探します。ようやく犯人を見つけて、怒りをぶつけようと思った小人ですが、何とその人は盲目のおじいさんでした。彼は故意に蹴飛ばしたのではなく、目に見えないだけだったのです。それを知った小さい人は、おじいさんのポケットに入り、音楽を鳴らすことで道端にあるものを知らせるという行動を取ります。とても小さいけれども、心があたたまる短編に仕上がっています。
『ポケットマン』が素晴らしいのは、セリフがほとんどなく、アニメーションと音で、それぞれのキャラクーの心の動きを描いているところです。子どもにとってはキャラクーが何を考えて、その行為をしているのかを考えることができますし、何と言っても音楽が素敵で、どこかコミカルなので思わず声を出して笑ってしマイます。また、大人が観ても、音やモーションだけでなく、物語構成やストーリーの運び方、色彩やデザインまですべてにおいてクオリティが高いので感心させられてしまうでしょう。アヌシー国際アニメーション映画祭、ザグレブ国際アニメーション映画祭、キネコ国際映画祭などで受賞するのも頷ける納得の完成度です。
 すべてをセリフなどで表現してしまうようなアニメーションではなく、音とモーションによって、いわば映画にしかできない表現をする稀有な作品『ポケットマン』。子どもに長々とみせることをあまり良しとしない方でも、7分くらいの短編としてまとまっているので、子どもに少しだけという場合にもおすすめです。思わず笑ってしまうような楽しい作品なので、ぜひ親子で鑑賞してみてください。
(文 | mewl 佐々木新)

 
 
 

Youtube ティザー版
https://www.youtube.com/watch?v=ld-bnQn_uXU

日本語版 (こども映画プラス)
https://vod.kodomoeiga-plus.jp/films/38700536/

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