こどもと絵で話そう「ミッフィーと絵かきさん」

 美術出版社から発刊されている「ミッフィーと3人の絵かきさん」は、コピーライターの国井美果さん、デザイナーの菊地敦己さんによって制作された絵本です。
 本書は、そのタイトル通り、オランダの画家、ヨハネス・フェルメール、フランスの画家、アンリ・マティス、そして、浮世絵師の葛飾北斎の絵を、ミッフィーと共に楽しむ内容となっているのですが、私たち mewl の”子どもを通じて世界を捉え直す” というコンセプトに近しい素晴らしい絵本に仕上がっています。
 とくにその構成は素晴らしく、三冊セットとなっている、『ミッフィーとフェルメールさん』『ミッフィーとマティスさん』『ミッフィーとほくさいさん』そのすべてで、ミッフィーと両親がそれぞれの絵かきさんの絵を一緒に鑑賞し、それぞれの視点で絵を語り合っていきます。
 子どもが見れば当然のことながら、絵の文脈、美術の文脈がわからない訳ですから、その反応はとても素直なもの(大人がみると思わず笑いが吹き出してしまいます)。北斎の絵を見て、「へんてこポーズ! てをだせ あしだせ ザルをかぶっている ひともいる」のように子どもらしい絵の感想が投げかけられます。それを受けて大人が感想を述べたり、質問に答えたりする。そのやりとりが本当に絵を楽しむということを思い起こさせてくれます。私も小さな頃、こんなふうに絵を見て喜んでいたなと感じました。
 本書は、子どもにしてみれば、歴史に残る巨匠の絵を知る機会、あるいは絵の奥深さに触れる入り口であり、大人も、ある程度の知識をつけた年齢では憚られるような、子どもにしか許されないような率直な感想や質問に答えることで、あらためてその絵の本質を学ぶことができます。
 巻末には、絵の詳しい解説もあり、かなり意識的に、子ども視点と大人の視点が混ざり合うような=絵を通じて子どもと楽しいコミュニケーションが図れる工夫が為されています。読んだ後は、きっと子どもと一緒に絵を描きたくなっている筈です。
 ミッフィーは、デザイナーでありながら絵本作家であるディックブルーナが生み出したキャラクターですが、彼の豊かな発想や意思を継いで、非常にさまざまな企画にコラボレーションという形で参加していますね。その姿勢に好感が持てます。
 絵を描くことが好きな子どもたち、そして大人たちにぜひお勧めしたい本です。
(文 佐々木 新)

 
 

こどもと絵で話そう
「ミッフィーと三人の絵かきさん」

美術出版社
4,500円+税
www.dickbruna.jp
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「Dick Bruna/See More」

こちらは海外の出版社による図録。フェルメールやレンブラントなどオランダ絵画が充実しライクス・ミュージアムの呼び名で親しまれるアムステルダム国立美術館が出版する遊び心ある素晴らしい本です。品切れでなかなか店頭にありませんが、見つけたらぜひ読んでみてください。

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