敏感な子の守りかた絵本

 「HSC」という言葉をご存知でしょうか。私はこの本に出会うまで全く聴いたことがなかったのですが、Highly Sensitive Child の略で繊細さ、感受性の豊かさ、鋭さ、敏感さを持つ子どものことを指すのだそうです。大人では、「HSP (Highly Sensitive Person)」と呼び、ほぼ5人に1人はこうした気質を持つのだとか。
 アメリカの心理学者 エレイン・N・アーロン博士によって提唱された「HSC」に興味を持ったのは、小さな頃の私自身がまさに「HSC」の子が示すような反応をしていたこと、今でも夫婦で会話をする時に同じ時間を共有している中で異なった感じ方をしていると気がついたからです。小さな頃からいままで振り返ってみて、周りにも同じような気質を持った友人や知人が結構いた (る) ように思います。
 本書で書かれている「HSC」の特徴をいくつか挙げてみます。
・初めてのことや人、慣れていない場所や人、環境の変化が苦手です。
・人が集まるところや騒がしいところが苦手です。
・刺激にとても敏感に反応してストレスを感じたり、落ち着きがなくなったりします。
・境界が薄く、人の影響を受けやすいです。
・挨拶や言葉がなかなか出てきません。
・子ども扱いや、権威、権力が極端に苦手です。(同じ目線で接してくれる人が好き)
・泣きやすいです。
 私の場合、大人となり、これらは克服できたり、反応に変化が生まれたりしましたが、まだいくつかのことは私という中で静かに眠っているような気がします (幼児化を強いられるような極限状態に陥ったら今でもこうした反応が起こるのではないかなという危惧がどこかにある)。
 今でも特に感じるのは、刺激に敏感ということかもしれません。初めての場所や慣れていない場所に行くと、音、光、空気、匂い、人の気配が一気に情報として入ってくるので、他の情報が疎かになってしまうことが多々あります。妻にもよく指摘されるのですが、そのような場所で会話をしていると、情報が抜け落ちて、話の内容が耳に入ってこないことがあります。(誰か他人がいるカフェで勉強したり作業したりするのが苦手で、静かな落ち着いた個室でないと頭が回らないという特徴もあります)
 本記事は、何も自分が繊細だということを声高に言うことが目的ではなく、「HSC」の気質を持つ人が結構いるのだ、ということを多くの人に知って欲しいという想いで書きました。大人になれば、言葉や他の表現で伝える手段は増えますが、子どもは自分の状態を伝える手段が限られています。「敏感な子の守りかた絵本」には、「HSC」の子どもたちに接する方法や意識のあり方が書かれており、きっと子どもにとっては自分のことを代弁してくれる、とても頼もしい本になると思います。ぜひ周りでこのような子どもがいるのならば、本書を通じて、大人と子どもで意識の共有を図ってもらえたら嬉しい。きっと無意識から一緒に意識を共有することで、より良いコミュニケーションが生まれ、信頼関係の構築ができるはずです。
(文 佐々木新)

 
 

『敏感な子の守りかた絵本』
著者: 斎藤 暁子(Kokokaku)
監修: 斎藤 裕
出版社: アート印刷
www.amazon.co.jp

Leave a Comment