ともだちのいろ

 絵本への出会い方にはさまざまな形がありますが、今回ご紹介する『ともだちのいろ』は、私の娘と息子の名に縁があって出会った絵本です。
きっかけは、息子の出産祝いを受け取りに父が経営する書店に行った際、偶然、置いたあった本書を父と共に働いている書店員の方 (出産祝いを贈ってくださった方でもあります) が薦めて下さったことでした。嬉しいことに娘と息子の名前を覚えてくださっており、ふたりの子どもたち「緑 (みどり)」と「青 (あお)」が登場するのだと教えてくれたのです。
 気になって本書『ともだちのいろ』を手に取り著者名をみると、私と妻が好きなきくちきちさんが手がけた絵本でした。ページを繰ると、くろちゃんという可愛らしい犬が登場し、色とりどりのともだちが現れては好きな色を聞いていきます。「くろちゃん なにいろ すき?」と聞いてくる、みどり色のかえるくんや、あお色のとかげくんが喜ぶように「みどり」「あお」と答えるくろちゃん。しかし、やがてともだちが一同にかえした時、「何色が一番好き?」と問い詰められてしまいます。
 誰もが小さな頃に一度はぶつかってしまう難しい質問ですね。私も複数のともだちの間に挟まって、選ぶ側、選ばれる側のどちらも体験したことがあります。どのともだちも好きだし、そもそも比較したことさえない。配慮が足りなかった幼い私は、どちらも選ぶことができませんでしたし、反対に選ばれた時も選ばれなかった時も複雑な気持ちになったことを覚えています (選ばれなかったともだちの立場を思ったり)。
 そんな優柔不断で配慮がない私とは異なって、賢いくろちゃんが出した答えは、「ともだちいろ!」でした。ともだちそれぞれが美しい個性的な色をまとっていて、どのともだちも好きだし、そこに優劣なんかないんだ、とくろちゃんは明快にも示すのです。このともだちのみんな揃って「ともだちいろ!」と叫ぶシーンは、実に迫力があり、感動してしまいます。実に巧みに練られた構成で、表紙から抑え気味だった色やレイアウトだからこそ、このシーンがとりわけ光を放ち色彩が溢れるつくりになっている。
 以前にも書いたことですが、きくちきちさんの絵本はどのページも芸術性が高く、切り取ってポスターにできてしまうくらいのクオリティの高さです。物語構成の巧さもあるのですが、やはり絵本の最大の強みである絵が心を揺さぶります。子どもと一緒に声を出して読みたい絵本です。
(書評文 | mewl 佐々木新)

 
 

『ともだちのいろ』
作・絵 | きくちちき
出版|小峰書店

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