いまめがあったよね?

 こどもが生まれて、絵本の贈り物を結構いただくことが多くなりました。服はサイズがわからないと難しいし、食べものも年齢的に食べてはいけないものもあり選びにくい。けれども絵本だと選びやすいということもあるのかもしれません。
 親としてもいただいた絵本は、自分たちが意図しない (贈ってくださった方の) メッセージが込められている気がして嬉しいものです。今回ご紹介する『いまめがあったよね?』はまさに、贈り物として我が家にやってきた絵本。実際読んで見ると、贈り主の人柄が垣間見える素敵な作品でした。
 本作は主人公である女の子がお出かけをする道中でさまざまなものと出会います。葉っぱにどんぐり、石や水たまり。大人にとっては何気ないものたちですが、こどもの目にはいつも新鮮で心ときめくものたちとの出会い。
 こどもの頃は確かにこうした何気ないものたちと「めがあった」という感覚があり、そのことを思い出せてくれます。そういえばそのような感覚が当たり前にあったけれども、大人になっていつの間にか薄れてしまったなと。
 少し思い返してみると、娘が自分で歩けるようになった時、散歩に出かけると、数メートル歩くだけでさまざまなものに関心を持って、全く進まないことが増えてました。石や葉っぱ、それに虫。大人が通過してしまうものに、子どもたちは驚き、刺激を受け取っている。
 そうした時、目的がある (予定やしなければいけないことがある) 大人のわたしたちはついこどもを急かしてしまいますが、ものたちとの戯れの時間をしっかり作ってあげなければと自戒を込めて考えさせられました。母は幼少期のわたしに多くの時間を与えてくれました。
 時代の移り変わりで、「めがあった」というだけで仲良くなるというのが昔よりも危うくなった気がするせいか、大人が読むと何だか懐かしい感覚になる絵本です。ぜひこどもと一緒に楽しんでください。

 

(書評文 | mewl 佐々木新)

 
 

『いまめが あったよね?』
おおたゆみこ/ぶん

にしかわ©ともみ/え

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