同じように開かれている人だと信じて、自分の境遇を話して本当に良かった

(山形市 ミミ)
 こんにちは。はじめてお便りを出します。
 わたしたち一家は、わたし、夫、10歳の息子の三人家族です。長らく住んでいた東京から、夫の故郷である山形市に引っ越しをして、約一年が経過しました。
 引っ越しは夫の実家の家業を継ぐためという理由なので致し方ないことなのですが、慣れ親しんだ環境が変わることが子どもにとって気の毒でした。せめて息子の節目の年 (たとえば小学校の卒業など) まで待つことを家族で話しましたが、義父が亡くなったこともあり、選択肢はありませんでした。
 地方での生活一年目は、決して楽ではありませんでした。それまで一年に一度、夫の実家には顔を出していましたが、やはり夫以外の家族にとっては慣れ親しんだ地ではありません。友人は皆無ですし、雪国での生活は厳しいものでした (何度、凍った道で転んだことでしょうか 笑)。
 わたしは夫の友人の紹介で新しい職場に勤めることになり、仕事自体はわりと早く馴染みました。しかし、息子は新しい学校の環境に馴染むまで時間がかかりました。保育園も小学校もこれまで一度も行きたくないと言ったことはありませんが、月曜日になると、行きたくないと口に出したり、挙げ句の果てに体調不良になったり。無理に行かせることはしたくなかったのでなるべく休ませるようにしましたが、そうなると、わたしもお仕事を休まなければいけません。勤務先にも迷惑をかけるし、といった具合に悪循環に陥ることに。
 わたしもストレスで鬱のような症状が出ましたが、引っ越し半年後くらいから、変化が起こり始めました。その頃発見したお花屋さんの息子さんが、たまたまた、我が家の息子と同じ学校であることを知り、やがて家族間の交流が始まるようになったのです。わたしが東京でお花に関わるお仕事をしていたこともあって話が弾んだことが幸いしました。それから月一、二回ほど、家族ぐるみで食事をしたり、お茶を飲んだりするようになりました。
 わたしは人見知りな方なのですが、友人となった、その花屋のオーナーさんがつくる花は、いつも優しくて、すべての人を受け入れるおおらかさを持っています。きっとこの方も同じように開かれている人だと信じて、自分の境遇を話して本当に良かった、と今では思えます。子どもたちも相性が良いようで、今では息子が熱中し始めた将棋を一緒にさす仲にまでなりました。そうした成功体験からか、少しずつこの地でも人と人が繋がる機会が増えてきているようです。
 引っ越ししたばかり頃の後悔はいつの間にか消え去り、現在では人との繋がりによって、生活にハリが生まれています。わたしは花によって、息子は将棋を入り口にして。自分が熱中できることを通じて、繋がりがつくれたことは素直に喜ばしいことであり、とても奇跡的なこと。少しでも何かが狂っていたら、地方暮らしでの道を開くことができず、閉鎖的で孤独な日々を過ごしていたかもしれません。そのことを忘れずに、ここでの暮らしを楽しんでいきたいと思っています。

 

 

本記事は読者さんからお便りを元に、許可をいただいた上で誤字の訂正や読みやすさを考慮して改行などを加えています。また、写真は編集部で選んだイメージとなります。
[お知らせ]
みなさまから、子育ての楽しみや悩み、家族の中で起こった不思議なエピソード、幼少の頃の話など、家族にまつわるお便りを募集しています。お名前は匿名でも構いません。尚、送っていただいたお便りを採用させていただいた場合、2000円分の図書カードをお贈りいたします。

Leave a Comment