童話・絵本などの児童書を手がけるBL出版から発刊された絵本「その手がおぼえている」は、作家 トニー・ジョンストンとイラストレーターであるエイミー・ベイツ、作家/翻訳の落合恵子さんの手によって生み出されました。
人は、胎児から大人になりやがて老いていく、という過程の中で、多くのものを否応なしに忘却していきます。それでも、「手」を通じて記憶していることは、生涯忘れさられることはない。そのような強く、そして、やさしいメッセージが本書には込められています。
また、本書の物語をひっぱるメインのイラストも素晴らしいのですが、手の触れ合いが象徴的に描かれている小さな挿絵が実に素敵なのです。きっと、ここからまだ人生のスタートに立つ子どもでも、何かしらのメッセージを受け取るのではないでしょうか。
表情を通じて、人は自分の感情を伝えますが、「手」もまた他者に伝える為に大切な役割を担います。母親と子どもの繋がり、次代へ伝えていくべきこと、ぜひ多くの方に読んでいただきたい絵本です。
(文 : 佐々木新)