自信をもてる子が育つ こども哲学

 「こども哲学」と呼ばれる、こどもたちと哲学対話をご存知でしょうか。NHK Eテレで放映されたり、学校などでも導入されています。私も名前は聴いたことがあったのですが、実際どのようなものなのかは知りませんでした。そんな中、偶然、「自信をもてる子が育つ こども哲学」を、図書館で発見して読んでみました。
 こども哲学は、そもそも1970年代に、コロンビア大学の教授であるマシュー・リップマンがオリジナルの哲学小説を教材に、 こどもたちと哲学対話を行ったのがはじまりだそうです。その取り組みを受けて、特定非営利活動法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダ代表理事であり、本書の著者である川辺洋平さんが「こども哲学」というプロジェクトを始めました。これまで、こどもたちと大人、あるいは、こどもたち同士が、一つの「問い」をめぐって考えたこと、感じたことを述べあい、聞きあうことで、考えを深め、お互いを理解できるようになる方法を探求してきたのだとか。自分が「哲学する」こと、「doing philosophy」をコンセプトにしています。
 本書の特徴としては、上記に挙げた公的な教育プログラムという側面ではなく、家庭内の「親子」にフィーチャーしていることです。実際、「わが子にすぐ手をあげてしまう」、「子育てよりも仕事を優先してしまう」、「習い事を押し付けてしまう」、「ひとり親家庭」、「特別な支援を必要としている」の悩みを抱えている親と対談する、という具体的な親子の変化をまとめた事例集になっています。
 私は上記にあげた子育ての問題には直接あてはまらないのですが、気付きが多く、視野が広げられたような気がします。例えば、親子というのは (こどもが幼い時には特に)、上下関係(権力関係)がどうしても生じがちで、その関係性がこどもの自由な思考力を削いでしまっている可能性があるという指摘です。これは何もこどもとの関係だけでなく、仕事や夫婦関係でもこのような構図に陥ってしまうことがあります。一方的だったり、マウントをとったり、論破するだけでは、自分の人間としての幅は限定されてしまいます。
 また、こどもを叱ってしまった時など、大人である自分の方が絶対的に正しいという思い込みを解く気づきになる可能性も高まると思います。こどもが見ている世界に注意深く耳をすますことで、あたらたな発見があることを教えてくれます。それはつまり、自分以外の他者がみている世界に共感するということでもあります。
 対談方式で書かれているので、とても読みやすく、こどもならではひらめきに溢れた発想も散りばめられていて思わず笑わってしまう一コマもあります。きっと子育てをしている方以外でも、あらゆる人とのコミュニケーションとして学びが多いのではないでしょうか(正直タイトルがもったいないと思うほど、多くの人に開かれています)。
(文 佐々木新)

 
 

自信をもてる子が育つ こども哲学
著者 | 川辺 洋平
単行本 | 222ページ
出版社 | ワニブックス (2018/7/25)
言語: 日本語
ISBN-10 | 4847097025
ISBN-13 | 978-4847097027
www.wani.co.jp

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