STAY SAFE / 母から子へそそがれる透明な力を知る

 新型コロナウイルス(COVID-19)によって緊急事態宣言が出された、異例とも言えるゴールデンウイーク。皆さんはどのように過ごされたでしょうか。
 私たち家族は、同じ岩手県に住む両親のもとへ車で遊びに行ったり、人もほとんどいない山に行ったりしましたが、多くの時間は以前おはなしした家族行事を行うために自宅で過ごしました。そのなかでもとりわけ時間をさいたのが、娘のアルバムづくりでした。ふりかえると驚くのですが、ざっと計算しただけでも12時間近くは費やしたのではないしょうか。さながら仕事のような熱心さで取り組んだわけですが、そのぶん発見や学びも多かったように思います。

 アルバムづくりは、無印良品が展開している「BON」というサービスを利用しました。工程は大きくわけて「写真の整理」「レイアウト制作」「入稿作業」。なかでも盛り上がったのが「写真の整理」でした。
 私たちの場合、一眼レフカメラ、夫婦それぞれのiPhoneで撮影した写真からセレクトすることから始めました。これが結構大変な作業で、正確には数えていませんが合計数百枚くらいのなかから数十枚を選ばなければいけません。それぞれが絞り込んだ写真を一度まとめて、その中からセッションしながら少しずつ数を減らしていくという作業です。
 この作業では、その写真の背景、その時どのような状況だったのか、夫婦それぞれが想っていたことをなるべく話すようにしました。写真の良し悪しということも選定基準にはあるのですが、それがどのくらい家族 (娘) にとって意味を持つのか、そういう視点で選んでいったのです。アルバムは基本的に家族で楽しんでいくもの。だから多少画質が悪くても、良いアングルでなくても、そこに詰め込まれている背景を大切に、というスタンスで作っていきました。
 こうした工程の中で、まず率直に驚いたことは、私の知らない顔を娘がいくつも持っていることでした。もちろん、このような顔をよくするよね、という写真もありますが、それよりも、こんな顔をするんだ、という驚きの方が大きかった。そのすべては妻が撮影した写真なのですが、きっと私とは見ている、あるいは、ふれている世界が異なっているからそうのように感じたのでしょう。
 写真は世界を切り取る、ひとつの手段です。撮影者によって同じ人や物でも捉え方は全く異なります。それが写真には鮮明にあらわれます。撮影者が何を面白いと思っているのか、何を美しいと感じているのか、あるいは娘が撮影者にどのような表情を見せるのか、という被写体との関係性も含めて、個性がはっきりとあらわれます。私は娘が生まれてから生後6ヶ月のあいだの、妻が見ていた世界にふれて、その変化に圧倒され、母と子の関係性が美しいと感じました。
 出産前、妻は iPhone や使い捨てカメラで撮影をしていました。選ぶ言葉に注意しなければいけませんが、それらは「美しい」と感じる写真ではありませんでした。もちろん、面白い、あるいは、上手く撮れているなと思う写真もあります。しかし、少なくとも以前は、被写体との美しい関係性を立ち上がらせるような、深みを持った写真ではなかったのです。
 しかし、娘が生まれて始終一緒にいるようになり、その眼差しは少しずつ変わってきたように思います。そこには忍耐しながらも人と向き合う力、もっと言えば(根底には)、娘がおこなうすべてを許容し、見返りを求めない透明な力が宿っているように感じました。それが本物であるということを私は写真を通じて、まざまざと見せつけられたような気がします。そこに写っている娘を眺めていると、あきらかに私の写真よりもはっきりとその美しい力が色濃くあらわれているのです。きっと辛抱強く娘の隣にいて、その顔や表情を見つめ続けたからこそ、世界がときおり見せる力強く美しい瞬間を捉えることが許されたのでしょう。
 アルバムづくりはとても時間がかかりますが、見返りを求めない、母から子にそそがれる透明な力を発見してすべてが昇華されていくような心持ちになります。この世界が瞬間に見せる美しさを思いがけず発見したような、そんな感覚が娘のアルバムづくりをして得た、私の最大の喜びです。
 もう少し外出自粛の時期は続くかもしれませんが、この期間を利用して、多くの方に子どものとの、あるいは家族との間に生まれる学びや発見があることを祈っています。

 
 

photo | 佐々木桜子
text | 佐々木新

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