ゆきのあさ

 『ゆきのあさ』は、グラフィックデザインと彫刻を学び、その後、立体や絵本の制作、雑貨企画、子どもとのワークショップなど幅広く活躍している、パリ在住のイラストレーター ステフィ ブロコリさんの絵本です。
 はじめてこの絵本を手にした時は、グラフィックデザイナーでこどもたちが喜ぶ絵本を多数制作している駒形克己さんの作風に近い感触を得ました。子ども心を忘れず、創造的な仕掛けを用意して子どもたちを喜ばせる。グラフィックデザインの視覚的な要素を大切にとてもミニマムで小さなものを大切にしている姿勢が好きです。
 本作は雪という幻想的な世界を上手く物語に落とし込んだ作品だと思います。舞台は雪が降り積もった、一面まっしろな銀世界。そこにさまざまな動物たちの足跡が残されています。その足跡を追って、隠れた動物たちをわたしたちは探していきます。蛇腹式の紙面を広げると、雪の中に散歩道があらわれて、仕掛けの裏に隠れていた動物がぱっと姿をあらわすのです。
 嬉しいのは足跡が型押し(触れると凹みがあり立体感が感じられる)で表現されていること。まるで雪を触っているかのような紙の質感を通じて、実際、雪国の世界を探索しているような心持ちになります。また、雪の白が下地にあるために、隠れていた動物たちがあらわれた時にはその色鮮やかさによる存在感が引き立ち、演出として効果的だけでなく、芸術的にも美しい造りになっています。
 雪国を体験できる美しく楽しい作品です。時期的にクリスマスプレゼントとしても良いかもしれません。
(文 佐々木 新)

 
 

ゆきのあさ
著者 | ステフィ・ブロコリ
定価 | 1980円(本体価格1800円)
ISBN | 978-4-87758-742-0
サイズ | 204×312×12mm
発売日 | 2015/10/23

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