葵・フーバー・河野さんの絵本

 

 みなさんの好きな絵本作家はどのような人ですか? 絵本はイラストというとても作り手の個性があらわれる特徴があるので、一冊の絵本の出会いから絵本単体はもちろん、作家さんが手がけた他の作品も好きになることが多いと思います。
 個人的に私が好きな絵本作家さんの特徴は、「色が多様であること」、「大人が読んでも面白いこと」、「想像の余白を持っていること」です。特に3つ目の「想像の余白を持っていること」は、子どもに読む時にとても大切にしていることです。これが正しいのだという正論を押し付けるのではなく、解釈が開かれていて、子どもが自由に判断できる。そういう絵本が好きです。

 

あいであ

 

 そのような特徴を持った作家さんの中でもとりわけ好きな作家として葵・フーバー・河野さんがいます。葵さんの作品は色へのこだわりも感じますし、グラフィックデザインも手がけていることもあってデザイン的にも美しい作品で、大人でも楽しめます。そして、何より葵さんの子ども向けに変に簡単にしようと全く思わないという姿勢がとても好きです。子どもの想像力を信じて媚びない。そうした想像の余白を大切にしている方なのだと感じます。
 このような作家性の基盤には、お父様である日本の高名なグラフィックデザイナーの河野鷹思さんの影響が大きいのでしょうか。日本に意識を留まらせるよりも海外でより良い本質的なものを吸収して欲しいと言われて育てられたようです。あるいは、絵本作家としてだけでなくマルチな領域で活動をしてきたことも絵本に新しい幅をもたらしたのかもしれません。とても美しい間を持ったレイアウトであったり、タイポグラフィだったり、きっと雑誌、おもちゃ、ブランケットに描くイラストレーションやグラフィックデザインによって培われてきた手法が美しい絵本たらしめているのだと思います。

 

NAEF(ネフ)のおもちゃ

 

 葵・フーバー・河野さんのインタビューを読んでびっくりしたのですが、本人は絵本作家になる予定はなかったそうです。ブルーノ・ムナーリさんや出版社の人から描いて欲しい、というお願いを聞いて (お願いされると断れない性格ということで) 自然の流れで絵本を作ることになったとか。そうした自然体で入ったからこそ美しい絵本になったのかもしれません。

 

Il Paese del Melograno 2002

 

 海外での作品が多いのですが (海外作品はもちろん外国語でことばが表記されていますが、その美しいイラストレーションを見るだけでもとても楽しい気分になります)、日本語版の作品がアノニマ・スタジオから出版されています。『ふゆ』、『あいであ』『ピーターとおおかみ』など、とてもシンプルですが、大人も子どもも楽しめる絵本です。

 

ふゆ

 

 生き方や姿勢がとても美しく格好良い葵・フーバー・河野さん。ぜひ作品を見かけたら手にとって欲しいです。

 

ピーターとおおかみ

 
 

葵・フーバー・河野
www.aoihuberkono.ch

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